U29 | Bogleheads®投資哲学リレーコラム「7.コストを低く抑える(Minimize costs)」

Bogleheads®日本チャプター: リレーコラム<vol.23>
2025年3月1日
堀内広輝

BogleheadsⓇ日本チャプター U29の堀内広輝です​。​(前回の堀内広輝さんのコラムはこちら
今回は、投資哲学「7.コストを低く抑える」、についてご紹介させてください。

とはいえ、日頃から生活雑貨や食事、楽しい旅行や交際などにお金をかける際、あまり無駄遣いしないように心がける方が多数かと思います。私もお昼は300円のうどんで済ませる派です。もちろん栄養バランスを考え、サラダと卵やちくわを​プラスして、糖質以外の栄養素も補強しつつです。他にも、バイトを含む仕事選びの際、給料や福利厚生だけで決めるのではなく、通勤・勤務時間やかかり得るストレスの程度を比較する方が多いと思います。

このように、何かを得る時にかかるお金や時間などのコストを出来るだけ抑える、ということは皆さんが当然に意識されていることかと思いますし、「改めて説明されることでもないな」、とお考えではないでしょうか。

しかしながら、今回のテーマであるコストを低く抑える、と言うことは抽象的なスローガンであって、いざ実践するとなるとなかなか難しいことだと考えます。なぜなら、一般的とされるコストの程度を把握する必要があるだけでなく、特に他よりもコストが低い場合は自分の認識に間違いがないかあるいは対象が詐欺的でないかといった実態を確認しなければ、コストを安全に低く抑えることは運任せとなってしまう一方で、その実践は負担が大きいからです。

例えば、大学生など社会経験が少ない人をターゲットにしたいわゆる闇バイトが、良い例かと思います。楽で高収入などという言葉に騙されてしまうということですが、根本的には収益に見合った一般的な労働量に加え、その労働の実態を把握していないからこそ騙されてしまうのではないのでしょうか。

他にも、他社よりも明らかに安い旅行ツアーに申し込んだら、パンフレットの写真は本当にただのイメージでしかなかった、なんて話は珍しくありません。この場合、旅行ツアーが存在しただけ運が良かったのかもしれません。似たような期待に反するように感じる出来事は、飲食店や通販サイトなど至る所で見られます。これらの不運は、比較サイトを活用し、口コミサイト等で実際の利用者の声を聞いていれば防げた可能性が高いですが、毎回細かく調べるのは面倒だから生じたのではないでしょうか。

ここまでは身近な例でお話ししてまいりましたが、株に関連した投資についても十分に当てはまると考えます。投資と聞くとどこか知的なイメージがあり、「そこに掛かるコストは将来自分に還元されるから大丈夫」、などの文言に謎の説得力を感じませんでしょうか。普通の買い物以上に金額が大きくなりがちなため、不幸なことに将来のためという言葉で上手くマスクされたムダに気づかずに資金を投入してしまった場合、その損害は運が悪いでは済まないでしょう。これを防ぐためには投資においても、かかりうるコストの一般的な水準を把握し、目論見書や信頼できる情報源を通して実態を掴まなければならないと考えますが、一苦労であることは事実です。

ですが、幸いなことに、新NISAの積み立て投資枠で購入可能な商品に限って言えば、その点はさほど心配がいらないかもしれません。使用するインデックス等商品のコンセプトがよく類似していた場合、コスト面に限って言えばどれを購入するか選ぶ事が出来ないほどに、低コストの商品が複数あるためです。また、何%の信託報酬率が低コストか、という具体的な数値に関しては、投資家の投資期間やその商品への期待度で変わってくることかと思いますが、現在の一般的な水準を知る上で、流入額上位つまり良く買われている投資信託の信託報酬率を参考にされるのは一つの手だと考えます。さらに、コストのみならず実態を含めた情報に関して、個別の商品あるいは商品比較に関するかみ砕かれた多数の解説へのアクセスが容易ですし、出典を明記させてAIに聞くことでもある程度信頼できる情報を得ることができるでしょう。

どんな小さなコストも少なくともチリツモ(塵も積もれば山となる)で、長期的には無視できない影響を及ぼします。さらに不幸なことに、投資信託のコストは定額ではなく定率です。つまりその影響は、単なるサブスクリプションに係るコストのように引き算では済みません。分配金再投資型の投資信託であれば複利的とも称される資産の増加に比例して、その費用は大きくなっていくのです。現状、低コストの商品が容易に手に入る恵まれた環境だからこそ忘れてしまいがちですが、ぜひ一般的なコスト水準や投資対象の実態を把握した上で、ご自身の目標とする運用期間等も考慮して試算などするよう心掛けていただけると、本テーマの深い理解につながり応用力も高まると考えます。

最後までお付き合いいただきありがとうございました。

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