Bogleheads®日本チャプター: リレーコラム 2022年2月27日
Bogleheads®日本チャプター代表の金野真弓です。
私はボーグル氏が創業したバンガードでの勤務を通じて、投資で成功するための法則の理解とその実践による成果、ボーグル氏とお会いした貴重な経験やバンガードの活動をサポートしてくださる方々との素晴らしい出会い、その後に繋がるキャリアなどたくさんのものを頂きました。バンガードの日本撤退に伴い、日本に根付き始めた良質な投資哲学の灯火を灯し続け、正しい資産形成のための情報発信や個人投資家のコミュニティをつくることでその恩返しをしていきたいと考え、昨年10月、投信ブロガーの水瀬ケンイチさんや虫とり小僧さん、セロンさんとボランティアでBogleheads®日本チャプターを立ち上げました。Bogleheads®の投資哲学やコミュニティは、日本の個人投資家の方々のお役に立つと確信を持ったからです。
Bogleheads®の英語ウェブサイトには、メンバーが投資やアセットアロケーション、引退などに関する様々な話題についてオンライン上でいつでも質問したり、情報交換出来る掲示板があり、近日中にこの掲示板の日本語版制作に着手する予定です。英語掲示板同様、日本語の掲示板も資産形成や投資関連の話題だけでなく、引退やキャリアチェンジ、お金や時間の有効活用、おすすめ家電といった幅広い話題もメンバー同士で相談し合える個人投資家の皆さんの資産形成や人生設計、日々の生活のお役に立てる掲示板づくりを目指しています。日本語掲示板が出来るまでは、メンバーの皆さんとのコミュニケーション手段が限られているため、Bogleheads®日本チャプター設立メンバーでリレーコラムを書くことにいたしました。これから暫くお付き合いのほど、宜しくお願いいたします。
私は昨年金融業界を離れ、資産の健康に加えて心身の健康を追求したく、現在鍼灸の専門学校に通っています。会社勤めは辞めた為、鍼灸の勉強をしながらBogleheads®の日本語掲示板の制作なども十分両立できると考えておりましたが・・・、制作が遅れております。鍼灸学校で毎日のように実施される生理学や解剖学、360箇所以上ある経穴（ツボ）などのテストにおいて、特に全身の骨や筋肉、神経や作用など膨大な名称を覚える必要のある解剖学は、少々勉強した程度では「平均点」に程遠い点数しか取れず、時間とエネルギーの殆どを鍼灸学校の勉強に使っているからです。鍼灸学校が春休みになりましたら本格的に掲示板制作に着手します。
高校は文系コースで、苦手意識のない文系科目は少し勉強すれば「平均点」は取れたこと、これまで苦手な事よりも得意な事や興味のある事に取り組んできた為、インデックスファンドの、市場の「ほぼ平均点」を確実に取れるありがたみを一定度しか理解していなかったことを今になって気づきました。得意でない分野で「平均点」を取ることがいかに難しいことか、現在身を持って実感しています。 （インデックスファンドの市場の平均点に「ほぼ」が付くのは、信託報酬が引かれるためです。信託報酬が低ければ、より平均点に近づきます。）
考えてみると鍼灸学校の同級生には、看護師や柔道整復師といった医療系の国家資格保有者や、プロスポーツチームに帯同するトレーナーなど、人間の身体構造や機能を熟知するプロフェッショナルが何人もいます。これはプロフェッショナル（機関投資家）がしのぎを削る投資の世界と同じ構図です。圧倒的な情報量とリサーチ力を持つ投資のプロフェッショナルに、投資にこれまで興味を持っていなかった個人の方が同じアプローチで挑んだら、いくら膨大な時間と労力を使っても太刀打ち出来ないことでしょう。しかも投資のプロでさえ、長期にわたって市場に勝ち続けることは困難です。
鍼灸学校が定める基準点以上の点数が取れないと留年になる為、年明け以降さらに多くの時間を勉強に注ぎ込んでいます。結果として、先日行われた全範囲の学力テストで無事クラスのほぼ平均点を取ることができました（２%アウトパフォームです！）。しかし、生活のほぼ全ての時間を使ってやっと「平均点」です。しかもこの先も長期的に「平均点」を維持できる保証はなく、努力し続ける必要があります。それが投資の世界であれば、誰もが「インデックスファンド」に投資をすれば、確実にほぼ市場の「平均点」が取れるのです。
投資の世界以外で確実に「平均点」を取り続けられる分野はないのではないでしょうか。継続的な努力や工夫、その時々で的確な判断や独自のセンスが必要な筈で、その道のプロがひしめく分野では「平均点」を取ることもままなりません。だからこそ投資は効率的に、確実に市場のほぼ「平均点」を取り続けることが出来るインデックスファンドに任せ、仕事や勉強、趣味などで成果を出せるように頑張ったり、家族や友人との時間に使ったり、様々な経験を積んだり、一人でのんびりする時間を作った方が満足度の高い充実した毎日を送ることが出来ることと思います。
私自身社会人になって間もない頃から頻繁に個別株を売買し、大幅下落時には心理的に耐えきれず投資から一時離れたり、損失を取り戻そうと再度市場に参加したりを10年以上繰り返し、結局積み上げたのは資産ではなく心労でした。2008年1月にバンガードに入社してから始めたインデックスファンドの積立投資で成功体験をようやく持てた実体験からも、誰もが市場のほぼ「平均点」を確実に取れるインデックスファンドはありがたく心強い資産形成の味方だと思います。ただ、市場の「平均点」は時に大きく下落することもあるため、市場の変動に一喜一憂することなく、長期で投資し続けることが大切です。
金野真弓
注：インデックスファンドへの投資は将来の成果を約束したり、相場下落時の損失を防ぐものではありません。投資には様々なリスクがありますので、リスクを正しく理解された上で、ご自身の判断と責任のもと投資を行ってください。